RINEXのファイルの見方
RINEX(Receiver Independent Exchange Formatの略)は受信機に依存しない観測データの共通フォーマットです。3種類のファイルがありASCII(アスキー:情報通信用の文字コード)で作成されています。
・観測データファイル(observation data file)
・航法メッセージファイル(navigation message file)
・気象データファイル(meteorological data file)
それぞれのファイルはヘッダー部とデータ部でできており、ヘッダー部には一般的なファイル情報、データ部には実際のデータが含まれています。
観測データファイル
ヘッダー部には、受信機機種名・受信アンテナ名・観測点の概略位置等の情報が入っています。拡張子は *.o、*.obs、*.rnx です。
データ部は、エポック(受信時刻)における、測位に使用した衛星の衛星リスト(衛星番号で表記)・疑似距離・搬送波位相・ドップラー・信号強度の測定値データが入っています。
単位は「疑似距離」はメートル、「搬送波位相」はcycle、「ドップラー」はHz、「信号強度」はdBHzで表されています。
<受信機機種名>
観測点の受信機機種名を記載しています。 (仮想基準点の場合、計算のメインとなる電子基準点の受信機機種名を記載)
(表記例) TRIMBLE ALLOY
<受信アンテナ名>
観測点の受信アンテナ名を記載しています。(仮想基準点の場合、計算のメインとなる電子基準点の受信アンテナ名を記載)
(表記例) TRM159900.00 GSI
<概略位置>
観測点の概算位置座標を記載しています。(日本テラサットではアンテナ底面の位置を記載)
座標値は三次元直交座標で単位はメートルです。
(表記例) -3746436.3317 3678291.6449 3609439.7373
<疑似距離>
衛星から受信機までの信号の伝達時間に、光の速度をかけて求まった距離が表記されています。
(表記例) 22526119.487
<搬送波位相>
搬送波の波数(衛星から受信機まで波が何個あるか)が表記されています。表記されている波数に波長(周波数ごとに長さが違う)をかけることで、疑似距離に近い距離が計算できます。
(表記例) L1波 118375561.863
<ドップラー>
ドップラー効果とは、電波の送信源(GNSS衛星)と観測点(受信機)との相対的な速度によって、周波数が変化して伝わる現象を言います。
受信機は、ドップラー効果により変化した周波数の変化量を計測し、ドップラー観測値として保存しています。GNSS測量では、ドップラー観測値を使用して、単独測位を行うなどに使用されています。符号は衛星が受信機に近づくと「+」になり、遠ざかっていくと「-」になります。
(表記例) -1246.984
<信号強度>
受信機が衛星から受信した信号の強度を表した数値のことを言います。
GNSS受信機では、搬送波対雑音密度比 (C/No = Carrier to Noise density ratio)で表記される場合が多いです。衛星から届く電波は様々な影響を受け、直接受信機に届かず、反射や回折等のマルチパスの影響を受け受信機に届くことがあります。その電波は、直接波に比べ信号強度が低下します。信号強度が低い衛星を排除することで、マルチパス<GNSS測量精度における主な誤差原因>の影響を低減し、測位精度の向上することが出来ます。
※搬送波雑音電力密度比とは、雑音に対して搬送波電力の大きさを表しています。
また、信号強度は、L1信号とL2信号では送信電力が異なるため、信号強度が異なります。また、衛星の仰角と相関があります。そのため、観測時に各衛星の信号強度を確認し、マルチパス等による信号強度が低い衛星を使用しないようにすることで、測位精度の低下を防ぐことができます。
(表記例) 41.800
最後に、実際のRINEXデータがどのように見えるか、バージョン2.11と3.02のサンプルを使用して、説明します。
RINEX(2.11)
バージョン2.11ではGPS+GLONASSの観測データが使用できます。
RINEX(3.02)
バージョン3.02ではGPS+GLONASSに加えて、QZSSとGalileoの観測データが追加されました。また、表示形式も変更されました。
航法メッセージファイル
衛星健康状態・軌道情報・衛星クロック情報等の衛星位置を計算するのに必要なデータが入っています。
拡張子 *.n がGPS、*.g がGLONASS衛星、*.l がGalileo衛星、*.j がQZSS衛星の航法メッセージファイルです。
ここで、衛星から送られてくる航法データは、どのように送られているかを簡単に説明します。
航法データは、5つのサブフレームを一塊とし、1フレーム(1サイクル)が1500bitで構成されています。データは1秒間に50bit送信されているので、1フレームを受信する時間は、約30秒かかります。電離層遅延補正係数・UTC関係・アルマナックは、順次内容が交代され、25回繰り返します。そのため、全ての航法メッセージファイルを受信するには12分30秒かかります。
久々に受信機を使用する際、なかなかFixしないのは、航法メッセージファイルの軌道情報の更新しているためです。
各衛星状態とクロック補正係数
衛星自身の状態の指数やクロック補正係数が収められています。
各衛星の軌道情報(エフェメリス)
自衛星の軌道情報が収められています。このデータの軌道6要素のパラメータを使用して、衛星の位置を算出します。
電離層遅延補正係数・UTC関係・アルマナック
電離層遅延において、あらかじめ決められたモデル式により遅延量を推定した補正係数が収められています。
全衛星の軌道情報(アルマナック)
全衛星に関する軌道情報が収められています。データ量が多いため2つのサブフレームにまたがって入っています。
以上のデータが航法メッセージファイルに収められています。
気象データファイル
気温・気圧・湿度等の対流圏遅延量を計算するのに必要なデータが入っています。
以上がRINEXの3つのデータファイルの説明です。
日本テラサットは観測データファイルと航法メッセージファイルを提供しています。