VRSの考え方について
VRSがどのようなものかを理解するには、RTKがどのようなものかを先に理解しておく必要があります。そのため、最初にRTKの説明をします。
[RTKの説明]
RTKは、座標既知の場所にGNSSアンテナを設置し、衛星からの信号(電波)を受信し続けます。これを固定局といいます。
同時に、新点として座標を計算したい場所にGNSSアンテナを設置し、衛星からの信号を受信し続けます。これを移動局といいます。
つまり、固定局・移動局それぞれでGNSSアンテナを設置し、衛星からの信号を受信し続けます。
この状態で固定局では、移動局が行うRTKの計算に使用するための補正データを、衛星からの信号と自身の座標とから作成します。
その補正データには、以下の情報を含んでいます。
・衛星からの信号を受信したときの時刻
・衛星からアンテナまでの距離(電波の波の数で表現)
・固定局自身の座標
移動局では、固定局で作成した補正データを、無線機や携帯などを利用して、リアルタイムに受信し続けます。
この補正データと、移動局自身で受信し続けている衛星からの信号を使用することで、下図の行路差部分を求めます。
この行路差をリアルタイムに求める計算が、RTKの計算そのものです。
<同位相面と行路差>
行路差が計算で求まると、固定局から移動局へのベクトルが計算でき、結果として、移動局の座標値が求まります。(固定局座標 + RTK計算結果ベクトル = 移動局座標)
尚、この行路差を求めるときには、衛星の座標と固定局の座標を使用しています。
※検討すべきこと
ここまでお話したようにRTKの計算は衛星からの信号(電波)を利用しますが、電波は大気に存在する水蒸気や電離層などの影響を受け、アンテナがその電波を受信するまでの時間には、影響のない状態と比較し遅延を含んでいます。
そのため、このRTKの計算誤差要因となる遅延の影響を減らすために、行路差を求める計算の中で、固定局でのデータと移動局でのデータの差分処理を行っています。固定局と移動局が近い場所に設置されていれば、遅延誤差が相殺され、誤差の少ない行路差が求まるはずです。
<遅延の度合いに差がない状態>
逆に、固定局と移動局が遠い場所に設置されていれば、相殺できない遅延誤差が計算過程で残ってしまい、RTKの計算結果に影響を与えてしまいます。
<遅延の度合いに差がある状態>
[VRSの説明]
日本テラサットでは、ユーザ指定の座標上(任意の場所)に、RTKの固定局アンテナを仮想的に設置し、ユーザがRTKの計算を行うための補正データ(VRSデータ)の配信を行っています。ユーザ任意の場所ですので、ユーザの移動局アンテナの近くに仮想の固定局(仮想基準点)を設置すれば、移動局での遅延誤差と同等のデータを受信することができることになります。
そしてここからは、本題の(と言いましても、もうすぐ話は終わりますが)日本テラサットのVRSサーバでは、どのように仮想基準点データを作成しているかの流れを示します。
①ユーザから、仮想基準点の座標の指示を受ける
②仮想基準点の座標から、VRSデータの作成に使用する電子基準点を決める
③電子基準点のアンテナから仮想基準点のアンテナまでのベクトルが求まる
④電子基準点のアンテナと仮想基準点のアンテナでの行路差が求まる
⑤電子基準点のアンテナで取得した位相に行路差を足し、仮想基準点のアンテナで取得した位相とする
⑥ユーザに、仮想基準点のアンテナで衛星捕捉したとする場合のRTKの補正データを配信する
⑤では、4、5点以上の電子基準点の④の結果を利用して決定します。電子基準点のアンテナで受信している信号も大気状態の変化等の影響を受けますが、信号を継続し分析することで、通常状態とは異なる信号は行路差の計算から除外できます。
当然ですが、配信している補正データには、先の説明で示した実際の固定局からの補正データと同様の情報を含んでいます。
・衛星からの信号を受信したときの時刻 ← VRSサーバで推測
・衛星からアンテナまでの距離(電波の波の数で表現) ← VRSサーバで推測
・仮想基準点の自身の座標 ← ユーザが指示した座標
そのため、これを受信した移動局は、RTKの計算を行い移動局の座標が求められます。